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神経症性障害の看護過程、看護計画(OP、TP、EP)のための必要な情報収集とアセスメント、主な看護計画と看護問題に対する成果目標達成のための具体策例

この記事の内容

 

 

 

 

神経症性障害の看護過程に必要な情報収集とその評価

1.患者背景

①現病歴
 ・病状の経過
 ・治療の経過
 ・発症の時期、きっかけ
 (補足) 発症の要因としては、恐怖症の傾向がある母親の療育や、頑固、秩序を重んじる性格傾向、重要な人の喪失や仕事上のストレスの経験、緊張の高い家族関係などがある。身体症状に執着し、病院やクリニックを転々と受診する場合がある。


②既往歴

 ・パニック発作の既往

 

③職業

④家庭環境、成育歴

⑤性格

 (補足) 患者の苦痛を理解し、援助する上で発症の要因となる患者の背景を把握していく。

 

 

2.全身状態

①栄養状態

 ・食事摂取内容

 ・身長、体重、体重の変動

 ・口腔、皮膚、粘膜の状態

 ・検査データ

 (根拠) 神経症性障害では、多彩な身体症状があっても、その症状の根底となる器質的な病変がない。したがって、自覚症状と他覚症状が一致しない。しかし、器質的疾患の中には、神経症性障害の症状を示す場合もある。ウイルス性の非特異脳炎で軽い意識障害があると、解離性(転換性)障害のような症状を示すこともある。また、脳腫瘍などでは、神経症性障害の症状を示すこともあり、既往疾患の再発や、他の疾患に罹患することもある。

 患者の訴えだけではなく、全身状態を常に観察し客観的データの把握に努める。

 

②代謝状態

 ・代謝性疾患の既往

 ・検査データ

 

③排泄状態

 ・排便状態

 ・排尿状態

 

④身体合併症の有無

 

⑤他の精神疾患との鑑別検査

 ・脳波

 ・脳のCT、MRI検査

 ・神経心理学検査

 ・心理検査(パーソナリティ検査)

 (補足) てんかんや脳炎、肝性脳炎などの意識障害は脳波上に変化が観察されるが、パニック発作や解離性(転換性)障害ではみられない。身体表現性障害の症状が強い場合、検査により精神的、身体的症状を悪化させることがある。


⑥患者の訴え

 ・自覚症状

 ・不安の内容

 ・表情


⑦自律神経症状や顔面蒼白

 ・心悸亢進

 ・呼吸困難

 ・冷汗

 ・口渇

 ・ふるえ

 ・めまい

 ・頻尿などの症状

 

 

 

 

3.活動と休息のバランス

①日常生活での活動状況

 ・疲労

 ・焦燥

 ・集中困難

 ・享楽不能

 


②ADLの程度

 ・保清・整容状態など


③睡眠状態

 ・不眠の訴え

  (補足) 全般的、持続的な不安障害のある場合、絶えず緊張し、心悸亢進や不眠に悩む、身体表現性障害では器質的な所見は無いにもかかわらず、頭痛、腹痛、悪心・嘔吐などの胃腸症状、あるいはふらつき、嚥下障害などを訴え、食事、排泄、睡眠などの日常生活に由来する。


 (補足) 強迫性障害による強迫行為は、睡眠時の儀式的行為や不潔恐怖による反復的な手洗い動作により日常生活に支障をきたす。強迫行動や不安による緊張が日常生活による緊張が日常生活や睡眠に影響していないか情報収集する。

#A 不安に関連した不眠

 

 

4.知覚・認知の状態

①現在の症状

 ・不安障害

 ・強迫性障害(強迫思考など)

 ・解離(転換)障害

 ・運動障害

 ・知覚障害

 ・身体表現性障害

 (心臓や胃などの症状の訴え、疾患に対する恐怖)
 ・神経衰弱
 ・精神的無力感
 ・離人、現実喪失感の訴え

 

 (補足) 不安は人間にとって不快なものであり、不安がより強くなることで苦痛、恐怖となる。一度パニック発作を起こすと、再度発作を起こすのではないかという予期不安をもつ。発作により無力感、焦燥感が生じるとともに、不安を回避するために広場恐怖へと発展する。不安の表出は個人差がある。患者の訴えでなく、動悸や呼吸困難など身体症状や強迫行為、他の身体症状など様々である。患者の表情や言動を十分観察し、患者が訴える本質的ニーズである不安の内容やテーマを理解する。

 

#B 健康状態の脅威に関連した不安

 

 

 パニック発作では、動悸、めまい、悪心、呼吸困難などが突然出現する。ふらつきや眩暈による転倒の危険性がある。また、過呼吸のために意識障害を起こすことがある。強迫性障害による、強迫行為は患者自身や周囲の者を巻き込み、自傷や他害の危険性がある。

 パニック発作、全般性不安障害、強迫性障害、解離性(転換性)障害などに、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬が使用される。作用は比較的迅速であり不安感が軽減するが、鎮静催眠作用と筋弛緩作用により、眠気、ふらつき、めまい、脱力、倦怠感、易疲労感などの副作用も出現する。フェノチアジン系の抗精神病薬が使用される場合には、症状が深刻な場合が多い。副作用としてパーキンソン症状などの錐体外路症状が出現していないかを観察する。

 

 

#C 認知の問題に関連した身体外傷リスク状態

#D パニックに関連した対自己暴力リスク状態

 

 

 


②治療
 ・精神療法(支持的精神療法、行動療法、精神分析療法、認知療法)
 ・薬物療法(抗不安薬、抗精神病薬、三環系抗うつ薬)

 

③疾患についての知識と反応

 (補足) 強迫障害における過度な手洗いや確認行動などの儀式的行動、反復行動は、不安をコントロールし強迫思考を抑制しようとする努力といえる。ストレスや不安などの感情を自由に表現すうることにより、自己勘定を認識するきっかけとなる。感情表現は、患者がストレスや不安などの感情と強迫行為や解離(転換)症状などの関連を認識し、健康的な対処方法を見出すためにも重要となる。

#E 高度の脅威に関連した非効果的コーピング

 

 

5.周囲の認識・支援体制

①家族関係

 (補足) 神経症性障害では、多彩な身体症状があっても、その症状の根底となる器質的病変がない。したがって、周囲は患者の反応を大げさとみたり、仮病を疑ったりすることもある。患者の不安、恐怖は強く、回復には周囲の理解と協力が不可欠となる。

 

②職業

③経済的状態

④人間関係(依存・攻撃性)

⑤家族の疾患への理解度・言動

  (補足) 強い強迫的思考や儀式的行動は周囲も巻き込み、対人関係、仕事や学業にも支障をきたす。身体表現性障害でも、頭痛、腹痛、悪心・嘔吐などの胃腸症状、あるいはふらつきや嚥下障害などで社会的役割を果たすことが困難となる。

 

#F 社会文化的不調和に関連した社会的相互作用障害

 

 

 

 

主な看護診断と患者の目標(成果目標)

 

#A 不安に関連した不眠

患者の目標(成果目標)

 ・生活状態に見合う継続した睡眠を確保・維持することが出来る。

 

 

#B 健康状態の脅威に関連した不安

患者の目標(成果目標)

 ・患者が自己の感情を表出することが出来る。

 ・不安行動が減少する

 

 

#C 認知の問題に関連した不安

患者の目標(成果目標)

 ・転倒して受傷しない

 ・パニック発作の兆候が分かる。

 ・パニック発作を起こさないように自己コントロールすることが出来る。

 


#D パニックに関連した対自己暴力リスク状態

患者の目標(成果目標)

 ・受傷の危険がなくなる(ex.過度の手洗い行動による皮膚損傷など)

 ・自殺念慮がなくなる。

 

 

#E 高度の脅威に関連した非効果的コーピング

患者の目標(成果目標)

 ・ストレス、不安、葛藤と不安行動との関連を自覚する。

 ・ADLに支障をきたさない。

 ・身体への影響が減少する (ex.手荒れが改善する)

 ・強迫観念にとらわれない代替方法を見出すことが出来る。

 

 

#F 社会的文化的に関連した社会的相互作用障害

患者の目標(成果目標)

 ・儀式的な行動による周囲への影響が減少し、対人関係に改善が観察される。

 ・身体症状の訴えが減少し、社会的役割を果たすことが出来る。

   (ex.職場や学業への復帰など)

 

 

 

 


神経症性障害の看護計画(具体策)


#B 健康状態の脅威に関連した不安

患者の目標(成果目標)

 ・患者が自己の感情を表出することが出来る。

 ・不安行動が減少する

 

#B に対する観察計画(OP)

(1)不安の訴え

 ①不安の内容とテーマ、期間

 ②訴える時の表情、様子

 (補足) 不安症状や、その程度を把握していく。パニック発作への予期的な不安は、広場恐怖症を合併することが多い。広場恐怖を伴うものかどうか、不安の対象、内容、程度を把握する。また、不安状態を把握する際は、不安による患者の苦痛を理解しようとする態度が重要となる。

(2)不安行動

 ①落ち着きの無さ

 ②注意力の欠如

 ③無目的な歩行

 (補足) 不安の表出は、個人により異なる。不安の訴えだけでなく、訴えているときの表情や行動、自律神経症状などの身体症状、全身状態を観察する。

 

(3)自立神経症状

 ・動機

 ・息切れ

 

(4)パニック発作の既往

 ①自律神経症状、発作期間、場所、対処など

 (補足) 発作の既往がある場合、発作に関する患者への質問により、不安が増大するする場合があるので、記録類から情報収集した方が良い。

 

(5)薬物療法

 ①薬剤の種類

 ②薬剤の量

 ③効果

 ④副作用

 (補足) 抗不安薬、抗うつ薬が使用されることも多い。治療の効果、副作用などを把握する。

 

(6)不安に対する患者の反応、行動

 ・閉じこもり

 ・無力感

 ・焦燥感

 (根拠) 不安を回避してコントロールできないことに無力感、焦燥感を抱いている場合がある。

 

(7)患者の不安に対する周囲の反応、支援状況

 

 

 


#B に対する看護ケア計画(TP)

(1)不安の表出への援助

 ①言葉だけでなく、書く、描く、奏でるなどの方法や全身で表現するように促す

 ②憎しみや怒りなどの否定的な感情も表出するように促す

 (根拠) 無意識に回避していた不安感情を表出することで不安を軽減し、自己の感情に気付く。患者の不安感情の表出を促す際に、不安による患者の苦痛を理解し、傾聴する姿勢姿勢で関わることが重要となる。患者の不安は周囲を巻き込むこともある。

 

 (補足) 看護師自身も患者とともに不安になることが無いように、自己感情に着目する。

 

(2)環境調整

①静かに臥床させ、静かな環境を整える

 (補足) 刺激が少なく、リラックスし、話しやすい雰囲気を作る。

②患者が安心出来るよう、そばに付き添う

 (補足) スキンシップより緊張、不安の緩和を図る。

 

(3)感情表現の支持

①感情表現を賞賛し認める。

 (補足) まず、安心して感情表現できる環境作りに取り組む。そのうえで、内容についての道徳的、論理的解釈はせず、患者の感情を第一に考え受け止める。

 

(4)休息、睡眠、活動への援助

 (根拠) 休息、睡眠、活動のバランスを図ることで、身体恒常性(ホメオスタシス)が増進する。

 

①足浴、温かい飲み物を飲むなど、患者の就寝時の習慣を実施する。

 (根拠)緊張を解きほぐすことで、睡眠と休息を促すことに繋がる。

 

②体操、掃除など全身を使う活動への参加を促す。

 (根拠) 身体活動により、エネルギーを発散する。全身の筋肉を使い弛緩することで、睡眠が促進する。

 

(5)薬物療法への援助

①確実な薬剤の与薬

 

 


#B に対する教育計画(EP)

(1)不安行動の兆候を自覚できるように援助

(2)不安行動を客観的に認識出来るように援助

(3)筋弛緩法について指導

 ①深呼吸、段階的筋弛緩、瞑想、イメージ想起、静穏で平和な場所への移動など

 

(4)家族・周囲への援助

 ①不安を訴える患者に対する家族・周囲の動揺や混乱を理解し、共感的に接する。

 ②患者の不安行動について正しい理解を促す。

 

 

 


#E 高度の脅威に関連した非効果的コーピング

患者の目標(成果目標)

 ・ストレス、不安、葛藤と不安行動との関連を自覚する。

 ・ADLに支障をきたしやすい。

 ・身体への影響が減少する(ex.手荒れが改善する)

 ・強迫観念にとらわれない代替方法を見出すことが出来る。

 


#Eに対する観察計画(OP)

(1)強迫観念、行動状況

 ①強迫思考、

 ②強迫行為

 ③強迫性恐怖儀式的行動 (ex.繰り返される手洗い、確認行動)

 

(2)強迫観念、行動による身体への影響

・頻回な手洗いによる手荒れなど

 

(3)生活への影響

 ①睡眠、食事、排泄、保清などの日常生活

 ②社会生活

 ・仕事

 ・学業

 ・役割遂行の状況など

 

(4)治療の効果、副作用

 ①薬物療法

 ②行動療法

 ③認知療法

 

 

(5)強迫観念、行動や治療に対する患者の思い

 ①罪責感、自制できなくなることに対する恐怖

 ②不安

 ③低い自己評価など

 

(6)強迫観念、行動に対する周囲の反応、支援状況

 

 


#Eに対する看護ケア計画(TP)

(1)強迫行為への援助

 ①強迫行為を無理に禁止しない

 

(2)誠実な対応
 ①患者の傍にいて、誠実に興味と関心を示す
 ②お世辞や不適切な褒め言葉、嘘は言わない

 

(3)ストレス、不安の表出への援助

 

(4)日常生活への支援

 ①日常私生活動作を遂行できるように、声をかける。

 ②食事前の手洗い、睡眠の準備などに一定の時間を与える。

 (補足) 強迫行為が食事、睡眠などの日常生活に支障を及ぼしている場合、必要に応じて援助する。

 (根拠) 強迫施行、儀式的行動は、日常生活動作の遂行に必要な時間を妨害、または長引かせることがあるためである。

 

(5)外傷がある場合の処置

 ①皮膚の発赤に対する軟膏処置など

 (補足) 不潔恐怖による手荒れ、などの自傷を抑制、防止しお、身体的安全を図る。

 

(6)強迫行動、自傷行為に軽減するような援助

 (根拠) 強迫行為や不安による緊張が持続する場合に必要となる。

 (補足) 複雑作業、活動、刺激に対処する能力は低下しているので、自己評価を高める達成可能な活動とする。

 

 ①音楽やゲーム、運動などの活動に参加する機会を提供する。

 (根拠) 楽しむことで、不安や緊張が緩和する。

 

 ②趣味や食べ物、患者が好む話題を選び、楽しい会話をする

 

 ③代替行動により強迫観念から離脱を図る

 ・自傷行為が見られる場合は、代わりに紙を引き裂かせるなどする。

 (根拠) 代替行動は強迫行為を助長するリスクもあるが、危険行動が減少し、現実的で安全な対処方法である。

 

 ・強迫行為、自傷行為が減少するよう励ます。

 ・健康的な対応が出来た場合には支持、賞賛する。

  (根拠) 肯定的なフィードバックは、健康的な対処行動を強化する。

 

(7)薬剤の確実な投与

 

#E に対する教育計画

(1)強迫思考を軽減するための自己対処法の支援

 (根拠) 患者の背景は、「愛情の欲求」「自己尊厳の欲求」が挫折していることがある。

 ①両価性、フラストレーション、厳格さなどについて話し合う。

 (根拠) 愛情と憎悪などの両価性、フラストレーション(欲求不満)やこだわりを維持する厳格さについて話し合うことで、患者自身が対処方法を見出すことにつながる。フラストレーションが減少すれば、不安も軽減し、儀式的行動への欲求も少なくなる。


 ②リラクセーション方法の指導

 ・深呼吸

 ・筋弛緩法など

 (補足) 強迫観念に対して正しい認識が得られるように、また患者に対して共感的な対応がとれるように説明する。

 

(2)家族や周囲の人への情報提供