精神科ナースの本気メモ

読むだけでスキルアップできるステキなメモ帳

高血圧症の看護過程・看護計画(OP、TP、EP)のための必要な情報収集とアセスメント、主な看護計画と看護問題に対する成果目標達成のための具体策例

 

 

この記事の内容

 

必要な情報収集とアセスメント

 

1.患者背景

①現病歴

 ・発症の経緯

 ・治療歴、降圧薬使用の有無

 

②既往歴、合併症

・脳血管障害、心疾患、腎疾患、末梢血管障害

 (補足) 高血圧は、遺伝的因子と様々な環境因子から発症する。高血圧と関連の深い脳血管障害、心疾患、腎疾患、末梢動脈疾患、妊娠、糖尿病、痛風、脂質異常症、肺疾患(とくに気管支喘息)、内分泌疾患などの既往や家族歴の情報を収集していく。

 

③生活習慣

 ・喫煙、飲酒、運動習慣、食事内容、塩分摂取量

 (補足) 患者の高血圧に対する理解度はどの程度かを把握する。健康管理行動を実践する能力がどの程度であるか把握する。減塩目標は6g/日であるが、日本での平均食塩摂取量は依然として11g/日程度として、多い状態が続いている。食事や運動などの生活指導と内服治療を長期継続して実践することは誰にとっても難しいことである。そのため、職場環境や家族の情報から問題点を明らかにしていく。

 

#A 治療計画に関連した非効果的な自己健康管理

 


④職業、家庭のストレス

 

⑤家族歴

 ・高血圧、糖尿病、若年発症の脳血管障害や心疾患、腎疾患など

 

⑥健康認識

 ・定期健康診断の受診の有無

 ・意欲

 ・知識

 (補足) 高血圧はコントロール出来なければ動脈硬化が進行し、重要臓器に影響を与える。生活指導、薬物療法を実践出来ない理由、受診しない理由は何であるかを明らかにする。また、高血圧指摘後、どのような経過があったのか、コミュニケーションから患者の思いを把握する。合併症の兆候はないか、治療経過の実践に協力することが出来る協力者の有無を把握する。

 

#B 治療行動についての知識不足に関連したノンコンプライアンス

 

 
 (補足) 遺伝的因子の理解、生活習慣の問題点の自覚、疾患や治療への認識、生活療法に対する理解や意欲、自己管理能力の有無が重要となる。

 


⑦生活改善の理解

 ・食習慣

 ・適正体重の維持

 ・薬剤(種類、量、作用、副作用)

 (補足) 塩分の過剰摂取は高血圧に影響する大きな環境要因である。コレステロールや飽和脂肪酸の多い食品・糖質の過剰摂取、野菜や果物の摂取不足は高血圧と関連する。また、早食いや咀嚼の不足は、肥満の原因となる。

 

 生活習慣の改善のみで、十分な降圧を得ることが出来ない場合は、指示の降圧薬の内服治療を開始する。確実に内服することで、高血圧をコントロールし、合併症の出現を予防する事が出来る。

 

⑧生活信条・価値観

 

 

 

2.全身状態

①栄養状態

 ・BMI(kg/m2):肥満度、体脂肪率、ウエスト周囲径

 (補足) 肥満は高血圧の増悪因子である。特に中枢性肥満は高血圧と関連が深い。また、脂質異常症や糖尿病によって動脈硬化が生じる。努責による血圧上昇があり、高血圧症の患者では、排便コントロールが必要になる。
 
 高血圧はほぼ自覚症状がないことが多い。そのため、合併症の出現と悪化が重要になる。その兆候や、前駆症状のモニタリングが重要になる。動脈硬化の評価、脳血管疾患や、心血管系、心不全や腎不全の兆候や症状をみて、高血圧治療の緊急性の有無を判断していく。

 

②代謝状態

 ・血糖値

 ・HbA1c

 ・中性脂肪

 ・総コレステロール

 ・LDLコレステロール

 ・HDLコレステロール

 (補足) 血液検査では、腎機能、肝機能、栄養状態、糖代謝、脂質代謝の状態をみる。また、心臓超音波検査では、頸動脈の動脈硬化の状態が分かる。胸部X線検査では、心肥大や大動脈の石灰化、肺の状態がわかる。

 

③排泄状態

 ・便秘の有無

 

④合併症の兆候

 ・脳血管障害

 ・心疾患(心筋梗塞、狭心症)

 ・腎不全

 ・眼底出血

 

 

3.活動・休息のバランス

①血圧値の変動

 ・外来血圧:血圧の変動の有無

 ・24時間血圧測定、家庭血圧

 ・自覚症状:頭痛、めまい、肩こり、鼻出血、悪心・嘔吐

 (補足) 高血圧には特徴的な自覚症状がほとんどない。そのため、検診などで早期に発見し、治療、管理していく。(急激な血圧上昇時は、自覚症状を訴えることがある。)外来では、症状ろデータを観察しながら血圧血を目標地値にコントロールすることを目標としていく。降圧目標値は年齢や合併症の有無で目安が異なることに留意する。

 


②呼吸・循環状態

 ・頸静脈怒張

 ・心雑音(Ⅲ音、Ⅳ音)、肺副雑音

 ・腹部腫瘤、腹部の血管雑音

 ・四肢、頸動脈の拍動、雑音、浮腫の有無

 ・心電図、胸部X線検査

 (補足) 高血圧では、合併症の出現と悪化の兆候や前駆症状のモニタリングが重要となる。なかでも脳血管障害と高血圧との関連性は高い為、脳神経症状の有無を観察する。動脈硬化の評価、脳血管障害や心血管系疾患、心不全や腎不全の兆候や症状を観察して高血圧治療の緊急性を判断する。

 

 心電図検査では、心臓の筋肉が厚くなる心肥大や心筋梗塞、脳梗塞が原因となる不整脈である”心房細動”のチェックが出来る。

 超音波検査では、頸動脈の動脈硬化の状態、胸部X線検査では、心肥大や大動脈の石灰化、肺の状態がわかる。

 

③脳神経症状

 ・入院前とのADLの変化

 ・麻痺の有無

 

④睡眠(時間、熟睡感)
 ・いびき、睡眠時無呼吸症候群の有無

 (補足) 睡眠時無呼吸症候群は酸素不足になるため血圧が上昇する。運動不足は抹消の血管抵抗を増加させるため、血圧を上昇させるとともに、肥満の原因となる為、ン微地上生活での活動量を把握する。

 

⑤活動状態

 ・運動量(内容、時間)

 

⑥社会的状況とストレス因子

 (補足) ストレスによって、交感神経が興奮すると、血圧が上昇する。対人関係での、心理的、社会的ストレスを把握していく。


⑦家族、周囲の人への依存度

 

 

 

4.知覚、認知

①高血圧の自覚症状

 ・頭痛

 ・めまい

 ・肩こり

 ・鼻出血

 ・悪心、嘔吐

 

②意識・言語障害の有無

 ・四肢の感覚、認知障害の有無

 ・言語障害の有無

 (補足) 過去から現在において、脳血管障害によって、言語障害、麻痺、意識消失が生じる。

 

③病態、疾患についての知識

 ・合併症の知識

 (根拠) 知識が不足していると、血圧のコントロールを不良にする。

 


5.周囲の認識・支援体制

①家族構成

 

②家庭的役割

 

③キーパーソンの有無

 

④社会的役割

 ・社会生活での活動状況

 ・仕事の種類、内容・継続状況

 (補足) 生活習慣の見直しは、仕事や人間関係などの社会生活への影響もあるたえめ、しばし困難を伴い、減塩、運動、禁煙など生活習慣の改善は家族や周囲の協力があることで実践しやすくなる。そのため周囲の協力や理解がある状態が望ましい。

 

 家族が困っていることを把握する。また、高血圧の未治療の割合は若年層で、80~90%に及ぶと言われている。高齢者の場合、家庭での日常生活行動やの自立や、確実な、薬剤投与が困難となる場合がある。家族の協力によって実践が可能である。

 

 

 

 

 

主な看護診断と患者の目標(成果目標)

 

#A 知慮計画に関連した非効果的自己管理

患者の目標(成果目標)

 ・日常生活の改善計画を立案し実行することが出kる

 

 

#B 治療行動についての知識不足に関連したノンコンプライアンス

患者の目標(成果目標)

 ・合併症の兆候や症状の圧巻が血圧と関連していることを言語で表現することが出来る。

 ・日常生活の改善、薬物療法、外来受診の必要性を説明することが出来る。

 

 

#C 高血圧症に関連した非効果的脳組織循環リスク状態

患者の目標(成果目標)

 ・血圧が目標範囲内に高圧する

 ・合併症(脳血管障害)を起こさない。

 

 

 

 

高血圧症の看護計画(具体策)

 

#A に対する観察計画(OP)

(1)病状・現状の理解度

 (根拠) 高血圧症の多くは自覚症状がない。そのため、嗜好や生活行動の制限を強いられる血圧コントロールでは、患者の自己認識が非常に重要となる。

 

(2)合併症予防の理解度

 (補足) 高血圧の重症度や合併症のリスクを踏まえて、医師からの説明の理解、患者、家族の疾患への思い、生活上の問題点などを理解して、学習内容を精選して指導する。

 

(3)生活習慣などの問題

 

(4)患者の家庭や社会での役割

 

(5)家族の理解と支援・協力状態

 

 

 


#A に対する看護ケア計画(TP)

(1)健康管理行動がとれない患者の思いの受け止めと実践への支援

 

(2)栄養指導への参加

①集団指導

②個人指導

 (根拠) 食習慣や食の好みは個別性が高い。そのため、栄養士から減塩やエネルギー制限の実践方法を個別的に学ぶことで食事療法の自信につながる。

 

(3)具体的な運動プログラムの計画と実践

 

 

 

 

#A に対する教育計画(EP)

(1)高血圧の原因・病態・症状・合併症の説明

 (根拠) 高血圧の原因には遺伝的因子と環境因子が複雑に関連する。そのことを患者自身が理解することが、日常生活の見直しと治療の基本となる。

 

(2)食事療法(減塩食、エネルギー制限食)

 ①塩分制限に従う(原則として6g/日)

 ②よく噛んでゆっくり食べる

 (補足) 血圧コントロールの基本は食事療法である。中でも特に、塩分制限が効果が高く、メインとなる。

 

(3)自己血圧測定方法

 

(4)日常生活の改善

①禁煙の必要性

 (根拠) 喫煙は動脈硬化促進因子であり、血圧を上昇させる。

②節酒の必要性

 (根拠) 適度の飲酒はHDLコレステロール増加作用がある。しかし、一方で脱水による高血圧が生じる。また肥満の原因にもなるため、節酒を助言していく。

 

③入浴方法

④血圧が上昇する行動とその対処

⑤仕事上の注意点

 (補足) 寒冷刺激、精神的ストレスなど血圧が上昇する因子を知り、ストレスを自己コントロールする。

 

(5)体重測定

 (根拠) 肥満の改善も降圧効果が高い。食事の見直しと適度な運動によって減量効果を得ることが出来る。体重測定を習慣化すると減量への意欲につなげることが出来る。

 

(6)運動療法

 (補足) 運動療法は、軽症高血圧患者が対象となる。そのため、患者の心肺機能を評価した上で目標体重と運動量は医師に確認する。

 (根拠) 肥満と高血圧の間には正の相関関係があると分かっている。食事療法のみでは基礎代謝が高まらないため、運動によって基礎代謝を高め、減量とともに末梢血管抵抗を下げることが高血圧治療には有効である。

 

(7)服薬指導

 (補足) 服薬指導おいて、副作用の説明をする必要があるが、使用指する薬剤によって副作用が異なる事を説明しなくてはならない。

 高血圧症では、長期間にわたって降圧薬を内服していく必要性がある。しかし、副作用から患者の不快感が強い場合、また、血圧が下がったなどの理由で薬剤を自己中断するなどの問題が生じる。勝手に判断せず、薬剤の効果と、服用方法の注意点、服薬中断による弊害を里香氏してもらう必要がある。

 

(8)緊急時の対処方法

 

 


#C 高血圧症に関連した非効果的脳組織循環リスク状態

患者の目標(成果目標)

 ・血圧が目標範囲内に高圧する

 ・合併症(脳血管障害)を起こさない。

 

 

 

#C に対する観察計画(OP)

(1)自覚症状

 ・頭痛

 ・めまい

 ・不眠

 ・鼻出血

 ・視力障碍

 ・悪心、嘔吐

 ・心悸亢進

 (補足) 自覚症状と他覚症状、検査データの両面から正確に高血圧の重症度・原因、合併症の有無を把握して対応する。


(2)他覚症状

①神経症状(麻痺、言語障害など)

②浮腫

 

(3)血圧測定、脈拍測定

 ①急性期には継続的な測定、早朝、安静時、活動前後
 (食事、排泄、清潔)

 (根拠) 血圧は夜間に低下し、起床時に上昇する。脳血管障害や心筋梗塞など様々な循環器疾患のリスクが高まる早朝の血圧測定は特に重要となる。

 急性期には、降圧薬の使用による治療効果が期待できる。確実に投与し、その効果を観察するため経時的に血圧測定する。

 慢性期には安静時の血圧測定とともに、活動前後の血圧測定をすることで、心臓への負荷状態を適切に評価することが出来る。

 

 

(4)検査データ

 ①心臓

 ・心雑音

 ・心胸比

 ・心電図検査

 ・心臓超音波検査

 

②腎臓

 ・尿検査

 ・BUN

 ・血清Cr

 ・尿酸
 ・PSP

 

③内分泌
 ・血中各ホルモン

 ・尿中各ホルモン

④その他

 ・総コレステロール

 ・HDLコレステロール

 ・LDLコレステロール

 ・中性脂肪

 (補足) 検査データから本態性高血圧と二次性高血圧の鑑別、高血圧の合併症出現の兆候や有無を評価する。若年者の高血圧や高齢者でも急激な血圧上昇をきたした場合などは、二次性高血圧を疑い検査を進める。

 (根拠) 心血管のリスクでもある慢性腎臓病は早期に発見、治療を開始する。腎実質高血圧のなかでも頻度が高い、診断にも血尿、タンパク尿、夜間頻尿、多発性膿胞腎の家族歴、腹部超音波やCT検査を確認する。 ・血糖値

 

(5)情動の変化(ストレス関連因子)

 

(6)治療内容

 (根拠) 利尿薬、β遮断薬はインスリン感受性を低下し、トリグリセリドを上昇させる。

 (根拠) 妊娠中は薬剤を使用することに不安を感じる母親も少なくない。また、授乳中は降圧薬の中止を考慮し、中止出来ない場合は、授乳を中止するなど、いずれも精神面への影響が大きいため、説明に配慮する。

 

(7)患者背景

 (根拠) 心房細動の合併により、脳梗塞を起こすリスクがある。

 

(8)患者の認識・不安感

 (根拠) 不安やパニックなど精神的な背景がある場合は、抗うつ薬が著効する場合がある。

 


#C に対する看護ケア計画(TP)

(1)緊急時の対処

 ①静かで温度差のない環境調整

 ②安静時の援助

 ③経時的な血圧測定

 (補足) 急激な血圧上昇が起こった場合、様々な自覚症状が出現し、また、治療による苦痛や不安は大きい。ストレスが高血圧を増悪させるので、安静の保持、苦痛と不安の緩和に視点を置き、細やかに配慮する。

 

 (根拠) 静かで、温度差の無い環境を作ることで、安静を保持することが容易になる。そうすることで、血圧を安定させることが出来る。

 

 

 

(2)血圧計、心電図モニタの装着

 (根拠) 継続的に血圧を測定することで、早期に目標血圧の維持をすることが出来、合併症の出現や症状の増悪を予防することが出来る。

 

(3)輸液管理

 ①降圧薬の確実な投与

 ②輸液量の調整

 (補足) 薬物療法の開始による症状の変化、薬剤の作用・副作用などの観察を行い、異常の早期発見に努めることが出来る。

 

(4)酸素投与

 (根拠) 酸素吸入によって心臓仕事量が減少することで、胸部症状の緩和や降圧を図ることが出来る。

 

(5)苦痛の緩和

 

(6)精神的ストレスの緩和

 (補足) 身体的な苦痛を対症的に緩和するとともに、入院や治療への不安の緩和を図り、血圧を上昇させる要因を除去する。

 

 


#C に対する教育計画(EP)

(1)安静保持

 (補足) 安静保持に対しては、自己認識が大切である。特に自覚症状が軽度の患者に対しては、十分に説明し、理解を促す。

 

(2)治療の必要性の説明と承諾

 (補足) 合併症の出現や二次性高血圧などでは、緊急処置や緊急手術が選択される。その場合、患者に不安を与えないように説明をする。