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急性リンパ性白血病の看護過程・看護計画(OP、TP、EP)のための必要な情報収集とその評価・アセスメント、主な看護計画と看護問題に対する成果目標達成の為の具体策例

 

急性リンパ性白血病の看護過程

 

本記事の内容

 

 

 

 

必要な情報収集項目とそのアセスメントの方法

1.患者背景

①現病歴

 ・病状の経過

 ・治療の経過

 (補足) 幼児期後期になると、命に関わる可能性のある疾患について何らかのかたちで気付き、説明によって理解することが可能である。この時期は、病気になったのは罰であると考えることが多い。好きなキャラクターを組み込むなど、理解力に応じた説明をする。
 
 学童期前期では、具体的な図・絵などを用いて疾患のメカニズムっや治療内容を理解することが出来る。学童期後半になると論理的に物事を考えられるため、予防行動など自己管理を主体的に促していくことも可能である。

 


②既往歴

 ・既往の有無

 ・出生時の状況

 ・発育状況

 (補足) 急性リンパ性白血病は、診断されたリスク分類によって治療法(化学療法、放射線治療、同種造血幹細胞移植など)が選択され、治療効果や副作用を把握する為に、様々な検査を定期的に行う。また、病状や治療効果は患児の予後にも影響するため、病状や治療経過は重要な情報となる。

 急性リンパ性白血病の原因ははっきりわかっていないが、先天性疾患や遺伝疾患などが影響している可能性がある。そのため、出生時の状況を含めた既往歴をアセスメントすることが出来る。

 


③病態・治療の理解

 ・発達段階と患児の理解度

 ・化学療法の必要性、合併症についての理解

 (補足) 急性リンパ性白血病は長期間に及ぶ治療になるため、患児の今までの生活やセルフケアの発達、学童期以降であれば学習がなどがさまたげられてしまう。睡眠ー覚醒リズムの発達過程にあり、入院生活が適正な睡眠習慣の獲得に影響を及ぼすことがある。

 

④親の生活信条・価値

 

 

 

2.全身状態

①栄養状態

 ・水分、栄養摂取状態

 ・栄養状態

 ・抵抗力、感染兆候の有無

 ・貧血、出血傾向の有無

 (補足) 骨髄内で腫瘍細胞が増殖して正常な造血が傷害され、好中球減少、貧血、血小板数減少が生じる。また、腫瘍細胞からの発熱物質の放出、腫瘍細胞に対するマクロファージ・リンパ球の反応、好中球減少による感染症発症によって発熱を生じ、代謝が亢進すると高カリウム血症となり、それに伴った倦怠感、食欲不振、悪心・嘔吐、便秘を生じる事がある。

 

②代謝状態

 ・発熱、肝機能、腎機能

 

③排泄状態

 ・排泄回数、量、性状

 ・排泄回数、性状、便の異常

 ・電解質のバランス

 

 

 

3.活動と休息のバランス

①活動への影響

 ・造血機能:Hb 血小板数、白血球(好中球)数、

 ・化学療法に伴う骨髄抑制

 ・循環機能

 (補足) 急性リンパ性白血病とその治療がもたらす影響として、造血機能の低下による易感染や出血傾向がある。感染症罹患や打撲などの身体損傷は出血の危険性を高める。また、出血傾向となるため、活動内容によっては打撲や内出血を生じやすい。貧血が著名である場合、呼吸困難、うっ血性心不全をきたすことがある。また、髄外浸潤により、跛行、歩行拒否を生じる。高カルシウム血症によって脱力も生じるころがある。

 

#B 血小板減少症に関連した身体損傷リスク状態

 

 


②年齢と発達段階

 ・通園、通学の有無

 ・基本的生活習慣の自立度

 ・睡眠、休息の状態

 

4.知覚・認知

①病態、疾患についての知識

 ・現在の状態に対する知覚の状態

 (補足) 白血病細胞が中枢神経へ浸潤すると、頭痛、光過敏、乳頭浮腫、脳神経障害を生じ、認知能力に影響を生じる。また、発達状況によっては、苦痛を上手く表現することが困難であるため、患児の表情や仕草なども観察しつつ全身状態をアセスメントし、苦痛の有無を予測していく。また、患児の発達段階に応じたスケールを使用したり、解りやすい質問わかりやすい質問を用いる。

 

②疾患がもたらす認知機能への影響

 ・髄外浸潤に伴う感覚機能・知覚機能への変化

 ・コミュニケーション能力

 ・認知発達段階

 (補足) 腫瘍細胞の浸潤により、肝臓・脾臓の腫大を生じ、網内系での赤血球消費により貧血を生じる。これらの事象により、感染症への罹患、皮膚蒼白、易疲労、天井出血、紫斑、出血を生じやすいため、観察が必要になる。化学療法の影響では、さらに骨髄抑制が生じ、口内炎や悪心・嘔吐により、食事摂取量が減少する可能性がある。

 

 

③心理状態

 ・ストレス症状の有無

 ・ストレスコーピング

 ・ボディイメージ

 ・自己概念

 ・自尊感情の脅威の有無

 (補足) 何度もお紺われる苦痛を伴う検査・治療は患児の不安や緊張を高め、脱毛などの副作用はボディイメージの混乱につながる。検査・治療を実施する医療者やそれを許す親に対して怒りを感じることもある為、病名は知らなくても、治療の必要性は理解できるように援助する。
 

 また、長期治療や骨髄抑制に伴う生活制限があり、発達段階によって様々なストレスを生じやすい。乳幼児期~幼児期ではストレスや不安が上手く解消できないことにより、心理的混乱につながりやすい。学童期では、友人や教師と疎遠になるのではないかという不安が生じ、検査・処置や今後のことを予測出来ないことによってストレスが高まる。思春期に近づくと、疾患や治療によって自分の身体が変化すること、これまでに獲得してきた能力を失うのではないかという不安を生じる可能性がある。

 

#D 検査や処置に関連した恐怖

 

 

 

5.周囲の認識・支援体制

①家族構成

②家族的役割

③家族サポート

④患児の社会的関り

⑤性機能

 ・月経の周期や出血量
 ・精巣の変化

 (補足) 患児が小さい場合、親が治療管理を行うことになる。また、患児に病名や疾患の詳細を告げない場合はや相応の対応をとらなければならないため、多くのエネルギーを費やすことになる。患児が小さい場合は、そばに付き添うことで安心する親もいるが、他家族員からサポートが得られないと身心の負担が大きくなる。

 

 兄弟がいる場合、兄弟は患児や親の状態から重大な事が起きていることを感じとり、不安や戸惑いを感じる。また、親が患児の世話に多くの時間を費やすことで、孤独を感じる。

 

 #E 不十分なんコピーングスキルスキルに関連した家族機能障害

 


主な看護診断と患者の目標(成果目標)

#A 慢性疾患に関連した発達遅滞リスク状態

患者の目標(成果目標)

 ・入院生活の援助や遊びによって成長発達が促進する。

 

#B 血小板減少症に関連した身体損傷リスク状態

患者の目標(成果目標)

 ・身体損傷をすることなく入院生活を送ることが出来る。

 

#C 化学療法に伴う免疫抑制に関連した感染リスク状態

患者の目標(成果目標)

 ・化学療法の副作用に伴う苦痛が軽減され、発達段階に合った感染予防行動をとることが出来る。

 

#D 検査や処置に関連した恐怖

患者の目標(成果目標)

 ・発達段階に合せた疾患や入院への理解や対処行動をとることが出来る。

 

#E 不十分なコピーングスキルに関連した家族機能障害

患者の目標(成果目標)

 ・家族員が体調を崩すことなく、役割の再調整が出来る。(兄弟児のケアが出来る。)

 

 

 

 

急性リンパ性白血病の看護計画例 


#B に対する観察計画(OP)

(1)疾患の影響・化学療法の副作用に伴った症状の程度

①治療内容や使用する薬剤

 (補足) 治療内容や使用する薬剤によって、貧血や血小板減少の程度が異なる。

 

②血液検査データ

 ・赤血球数

 ・白血球数

 ・Hb

 ・PT

 ・PTT

 ・K

 

③バイタルサイン

 ・脈拍

 ・血圧

 

④貧血症状の有無

 ・倦怠感

 ・ふらつき

 ・顔色不良

 

⑤出血症状の有無

 ・出血斑

 ・鼻出血

 ・消化管出血

 ・怪我による出血

 (根拠) 血小板数による出血傾向の状況を示す。
 血小板数:80000/μℓ以下 (皮下出血、粘膜出血)
 血小板数:20000/μℓ以下 (頭蓋内出血などの重症出血)

 

 
⑥月経時の出血
 ・出血期間
 ・貧血症状悪化の有無

 

⑦貧血や血小板減少に対する対症療法
 ・内服
 ・輸血
 ・成分輸血

 

⑧髄外浸潤に伴う症状の有無

 ・歩行障害

 ・脱力

 (補足) 骨痛により、跛行、歩行拒否が生じたり、高カルシウム血症によって脱力を生じる。


(2)日常生活への影響

①ADLの状態

 ・移動時

 ・遊びの様子

 ・日常生活

 (根拠) 患児の発達段階によっては、遊びなどに夢中になることによって、苦痛などの表現がされないことや、安静が守れない場合があるので、観察を必須となる。

 

②入院生活の環境

 ・ベッドの種類

 ・ベッド周囲の環境

 

③出血傾向、貧血の状態にあることの理解の程度

 

④気を付けることについての理解度の程度

 (補足) これらのデータは、患児の表情や様子なども注意深く観察する。

 


#B に対する看護ケア計画(TP)

(1)身体損傷予防に対するケア

①環境整備を行う

 ・ベッド柵をスポンジなどの緩衝材で保護する

 ・角が鋭いもの、硬い物をベッドに置かない

 (根拠) 出血傾向が強い場合には、血圧測定時の加圧によって出血版が出来ることがある。採決時の止血sにも注意する。

 

②倦怠感、ふらつきなどが強い場合には、日常生活行動の介助に入る

 ・ポータブルトイレの導入

 ・車いすの使用

 ・ベッド上での日常生活ケア

 ・入浴時間の短縮

 

③安静度に合せた遊びをする

④出血傾向がある場合、ガーゼや毛先の柔らかい歯ブラシを使用し、硬い食物を避ける

⑤検査や処置による侵襲を最小限にする

 

 

 


#B に対する教育計画(EP)

(1)化学療法に伴う貧血や出血傾向とその影響を説明する

①身体損傷を予防していくための方法を患児・家族と共に考える。

 (根拠) 小児の入院生活において最も多い事故は、ベッド柵を挙げずに転落する事故である。特に出血傾向がある場合は、頭蓋内出血など重篤になる危険性がある為、注意して観察していく必要がある。

 小児は頭部が全身のバランスと比べて重たい。策が上がった状態であったとしても、頭部が柵よりもはみ出している場合、重量でベットから転落する危険性がある。


#C に対する観察計画(EP)

(1)急性リンパ性白血病に伴う造血機能、化学療法による骨髄抑制の程度

 (補足・根拠) 決められた時間での確認だけでなく、生活ケアや食事介助、処置時や検査時など日常生活のケアや遊びの最中でも注意深く観察する。

 

 患児は年齢が低いほど、言葉で自分の状態を伝えることが出来ない場合が多いため、観察による情報収集が中心となる。普段から意識的に観察していく必要がある。

 

①検査データ

 ・白血球(好中球)数

 ・Hb

 ・CRP

 ・TP

 ・Alb

 (補足) データは必ず治療内容を考慮し経過を追っていく。

 (根拠) 化学療法の開始により、骨髄抑制が開始される。骨髄抑制は治療開始後4~10日でピークに達する。多剤併用で何クールにもわたる治療であり、休息期間は小綴胃抑制の回復を待ち、再度治療を開始する為、検査データを確認する。

 

 

 

②治療内容や使用する薬剤

 ・化学療法

 ・放射線治療

 ・同種造血幹細胞移植など

 

 

③バイタルサイン

 ・体温

 ・脈拍

 ・呼吸

 ・SpO2

 ・血圧

 ・肺副雑音

 ・腸蠕動音

 

④免疫抑制に伴う感染兆候

 ・発熱

 ・咳嗽

 ・鼻汁

 ・下痢

 ・発熱

 ・疼痛

 ・掻痒感

 (根拠) 白血球数減少による局所感染に伴い、投与後、2~10日で口内炎が起こることが多い。悪心、嘔吐は消化管の粘膜障害の程度に影響して出現する。苦痛を伴い、食事摂取量が低下し、免疫機能への影響も考えられる。

 

⑤化学療法の副作用に伴う苦痛の程度と水分、食事摂取量

 ・口内炎

 ・悪心、嘔吐

 ・水分摂取量、食事摂取量

 ・補液

 

 

(2)感染予防の促進行動の程度

 (補足) 発達段階と家族の協力も含め、感染予防に要なアセスメントを行う。

①感染予防の実施状況

 ・うがい

 ・手洗い

 ・歯磨き

 ・入浴

 ・清拭

 ・陰部洗浄

 ・環境整備など

 (根拠) 嗽や、手洗いなどの一連の行動は、2~3歳で出来るようになる。うがいやマスク装着は、幼児期後期、自ら感染予防行動がとれるようになるのは、学童後期くらいからである。
 

②感染予防薬の服薬状況

 

③感染しやすい状態である事の理解度

 

④感染予防のセルフケア行動について

 


#C に対する看護ケア計画(TP)

(1)感染予防ケア

①うがい、マスク、手洗いなどの感染予防を患児・家族とともに実施する。

 (補足) 収集した情報をもとに、患児にとって最もよい感染予防方法を検討する。確実かつ患児のセルフケア能力を向上させることをふまえ、実施する。

 

②皮膚の清潔保持を状態に合わせて行う
 ・入浴
 ・清拭
 ・陰部洗浄
 (根拠) 患児の発達段階、性格、これまでの経験により、適している方法や援助内容が異なる。
 
③環境整備
・ベット策の清掃
・埃などの除去
・清潔なシーツ
 (補足) 患児、家族とともに、白血球(好中球)数の推移を確認していく。患児が苦痛なく過ごすことが出来る環境を整える。
 (根拠) 好中球が1000/μl以下であると、重篤感染を起こしやすい。白血球数1000/μL(好中球500/μL)以下を易感染状態であるとし、医師からも隔離指示が出される場合が多い。
 しかし、閉鎖された空間で過ごすことは、外界からの刺激で、成長発達している患児にとっては、大変な苦痛となる。
④易感染状態によっては、逆隔離やクリーンカーテンの使用をする
⑤感染予防のための内服薬、タイミング、形状の工夫をしてく。
⑥口内炎などの症状を緩和し、食事や水分が効果的に摂取できるように援助する。


#C に対する教育計画(EP)
(1)感染予防教育
①患児・家族に治療効果と副作用に伴う感染の危険性、および感染予防についての必要性を説明する。

 

②患児・家族の感染予防行動が継続できるような方方法を促進する
 (補足) 家族に重い負担となることがないような予防行動を心がける。

③感染兆候出現時には医療者に報告する事を説明する。
 (補足) 発達段階に合わせて、ご褒美シールなどを活用する。
 (根拠) 長期にわたる感染対策が必要であるため、家族の付き添いなしでは出来ないような、予防行動では継続が難しい。幼児期以降では、励みがあることで、好ましい行動を継続していくことが可能である。