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辛い不眠のある患者に対する情報収集とアセスメント、看護計画・看護介入についてまとめ

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睡眠障害とは、不眠だけではなく、過眠症や睡眠中の異常行動を含む睡眠に関係する多様な障害を包括した総称である。多くの症状から成ることから、いくつかの分類法がある。その為、看護師として出来るケアも多様である為、知識の定着が必至である。
 

1.不眠症とは何か?

 

不眠症とは、不眠の訴えのある睡眠障害である。精神科臨床で出会う睡眠障害の中で最も高頻度に観察されると推定されている。代表的な睡眠障害と言える。

 

・精神衛生不眠:不眠に対する不安と恐怖から、睡眠状態に過度にとらわれることにより、より不眠状態が持続するという不眠

 

・続発性不眠:精神疾患や身体疾患、薬物・物質乱用によって生じた不眠症。

 

 不眠症の代表的なものといえば、精神生理性不眠である。不眠症の中で最も頻度が高い。最大の特徴として、「眠れなかったらどうしよう。」という不安に駆られる点であり、その思いが精神的緊張につながり、さらに入眠を妨げるという悪循環になっている。

 心配事があって、眠れないという一過性の不眠とは異なり、少なくとも以下1か月以上、死微状態が続いていることが診断に必須である。

 

 

 

 

 

1)睡眠障害の臨床症状

 

 不眠のタイプには、入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒、熟眠障害の4つがある。

 中でも入眠障害が最多である。また、眠れない為、その他の精神機能にも影響を及ぼす。よって、気分の落ち込み、意欲低下、注意・集中力の減退、倦怠感の増加などが生じる。

(1)入眠障害

 「寝付けない。」という訴えに代表される。不眠の訴えの中では最多である。特徴てして、就寝後から入眠するまでの時間が長い(延長している)。すなわち、病的に寝つきが悪いという状態である。一般的に、入床から入眠まで、30分から1時間以上かかり、かつ本人がそれを苦痛であると感じている場合に入眠障害と診断される。

 ただし、入眠時間は個人差や年齢によっても異なる為、本来の入眠時間と比較して長くなっているか、それを本人が苦痛と感じているかに着目する

 

(2)中途覚醒

 「夜間に何度も目が覚める」などと訴え、一度入眠した後、朝方に起床するまでの間に何回も目が覚めてしまう状態である。

 中途覚醒においては、健常者であっても加齢に伴って増加する現象である。高齢者では、その回数が頻回となり、睡眠の量・質ともに低下し、日中の活動に支障が出る場合を除けば、必ずしも病的とは言えない。

 

(3)早朝覚醒

 定義として、通常の起床時間の2時間以上前に覚醒してしまい、その後再入眠できない状態のこと。例えば、病棟の起床時刻が6時であった場合、4時より前に起床した場合は早朝覚醒とアセスメントすることが出来るが、4時以降の場合は早朝覚醒とはアセスメント出来ないことに留意したい。

 加齢に伴って増加する。

 

(4)熟眠障害

 「うとうとするぐらいで眠れた感じがしない。」と訴える。睡眠時間は十分であっても、深く眠った感覚が得られない状態である。

 客観的に入眠しているように観察されたとしても、患者自身が『眠れた感じがしない。』と訴えている場合には熟眠障害とアセスメントすることが出来る。

 


2)どのような治療があるか

 

  (1)睡眠および睡眠衛生に関する教育指導

 睡眠衛生とは何を意味するのか?睡眠衛生とは、外的環境要因と睡眠に関わる生活習慣の総称である。睡眠衛生に則った生活教育を実施することによって、患者に睡眠に関する適切な知識を提供し、質の良い睡眠をとることが出来るように生活環境を整え、日常生活において睡眠に有利に作用する工夫を実践してもらうことが治療的に大原則になる。特に、精神生理性不眠の場合、睡眠に関する正確な知識を持たないまま不眠の弊害を拡大解釈して過度に恐れていることがある為、睡眠衛生教育を通して、睡眠を妨害している誤った知識を再構成することが必要となる。

(2)非薬物療法

①非刺激療法:

 睡眠を妨げるような条件反射を引き起こす刺激を全て取り去ることから始める。具体な看護計画を挙げると以下のようになる。

・寝具・寝室は夜間の睡眠時以外は使用しないようにする。

・眠れない場合はなるべく早く離床するように指導する

 ~根拠~

 寝室で眠れずに焦り苦しむという望ましくない条件付けの形成予防の為である。

 

②睡眠制限療法

 不眠症患者は、少しでも長時間睡眠時間を確保しようとするあまり、長時間床の中で過ごしていることが多い、これがかえって熟睡感の欠如や中途覚醒の原因となる場合がある。就床から起床までの床上時間を制限し、就床時間と身体が要求する睡眠時間とのギャップを少なくするとともに、軽度の断眠効果によって不眠を改善する。

 

③睡眠前の筋緊張緩和を目的としたリラクゼーション

 ・寝る前の軽いストレッチ

 ・漸進的筋弛緩法

 ・自律訓練法などがある。

 

(3)薬物療法

 第一に、睡眠衛生に関する教育や非薬物療法を実施したのちに薬物療法に移った方が理想的である。しかし、実際の臨床場面においては、薬物療法を併用したほうが、効果があがる場合が多い。
 薬物療法においては、作用発言の速さと血中半減期の臨床特性を考慮し、患者の不眠のタイプに基づいて睡眠薬を選択することが重要である。

 

 

 

 

 

不眠に悩む患者対する看護

 必要な情報・観察のポイント

1.身体的要因

 身体的要因とは、不眠の原因が疾患や疾患に伴う症状であることである。ここげ挙げられる症状とは、以下の要因であるので観察したい。

・痛み(疼痛の有無、疼痛の部位・程度・ペインスケール)

・かゆみ(掻痒感、掻痒感の部位と程度)

・のぼせ、ほてり(内分泌系の疾患)

・呼吸困難(咳嗽、喀痰、SpO2、チアノーゼの有無)

・不随意運動(四肢の振戦)

・頻尿

 以上の身体症状をきたす疾患では特に不眠が多くなるので、看護計画に立案する。
また、患者の既往歴や現病歴を尋ね症状と結びつきがあるかアセスメントし、治療・看護を行う。

 

2.精神医学的要因

 不眠はほぼすべての精神疾患に観察される。

 精神症状・精神状態の増悪、発症期に不眠も発症したり増悪する事が多い。また、精神症状や精神疾患が回復すると不眠も軽快することも多い。その為、精神状態をアセスメントする指標となるので、不眠の周期や不眠となる要因を把握することも看護につながる。
 不眠以外の精神症状の有無を把握する。精神症状の変化と不眠の関連性をアセスメントし、看護介入する。基礎疾患がある場合には、基礎疾患の治療と看護と並行して不眠の治療を行っていく。

 


3.薬理学的要因

 服用している薬物が原因となって睡眠障害が生じている場合がある。

・選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)などによる抗うつ薬の内服は気分が高揚し、不眠に繋がることがある。

・抗精神病薬の副作用であるアカシジア

・抗精神病薬の過量投与による過眠、せん妄

 また、日常生活の中で、 アルコール, カフェイン, タバコ(ニコチン)は睡眠を浅くさせる。また中途覚醒の原因にもなるので、嗜好品の有無と程度を把握しておく。また、市販薬やサプリメンのなかにも不眠を引き起こすものがある。

 以上より、観察項目と情報のアセスメントを挙げる。

必要な情報

・服用している薬剤

・常用している嗜好品

アセスメント

睡眠に直接的に影響しているか副作用の有無。薬物同士の相互作用が不眠をもたらしていないかなどを検討する。
 嗜好品の連用が不眠の原因と考えられる場合には、断酒や禁煙を勧める。


4.生理的要因

 不規則な生活習慣、不適切な寝室などの環境要因が生理的影響を及ぼして、結果的に睡眠障害を誘発している場合を生理的要因という。
 生理的要因不眠を引き起こす要因が隠れていないかを査定する為に情報収集を行う。

収集する情報

〇現在の生活スケジュール

1.起床時間~就寝時間

2.食事時間・内容・量

 3.日中の活動内容や量

 以上の情報を中心に収集することで、生活リズムに規則性があるか,睡眠の妨げとなるような活動(就寝前に激しい運動をする,熱すぎる風呂に入る,就寝前に多量に食べるなど交感神経を刺激するようなもの)がないかをアセスメント、生活指導を行う。アセスメントをする為に、看護師は多くの睡眠に関する知識が必要となるので学習を怠らない。

〇生活環境のアセスメント

寝室環境(温度、湿度、騒音、寝具、臭気など)
について情報収集・アセスメントする。アセスメントした情報を元に看護計画を立案し、環境整備を行う。

 
5.心理的要因

 心配事、不安などの心理的ストレスがある場合には、入眠が困難になる。また,慢性の
不眠症患者においては、『眠りたいけど眠れない。』という不眠に対する恐怖が不眠をさらに悪化させる悪循環に陥いる場合がある。眠りへのとらわれから不眠が生じていると考えられる場合は,睡眠についての正しい理解がもてるよう睡眠衛生教育を行い、不眠に対する不安や睡眠に対する過剰な意識を軽減する。
ケアのポイント

 

 

1.看護の方針

1)ケアを行う上での留意点

①患者の訴えを傾聴し、『不眠の辛さ』に共感する。

 睡眠障害のケアにおいて基本となるのは、患者の訴えをよく聴くことである。しかし時折、睡眠障害に対して神経質となり、訴えが執拗で誇張した表現が目立つ場合がある。これも、これも患者自身は不眠の症状があることで、苦痛や焦燥感が生じることで現れる訴えであるとアセスメントすることが出来る。したがって、仮に患者の訴えが過剰であったとしても、その辛さを理解し、受容する。
 睡眠障害の訴えの中には, 「心配事を考え続けてしまい寝つけないので話を聞い
て欲しい」という訴えが観られる場合がある。こういった訴えの場合、患者が話すがまま、長時間聞き続けるとことは好ましい対応ではない。根拠として、患者が自身の話をすることで気分が晴れるように思われるが、逆に辛い出来事を再体験するきっかけになってしまう。こうなると、不要に興奮して眠れなくなる場合がある。患者の辛さや不安、憤りなどの思いに共感することは大切である。

 しかし、夜間を入床を促し、休息時間を確保した上で、日中あらためて一緒に対処策を考えることを提案し、話を中断して就床を促す方が好ましい


②患者の訴えから睡眠障害のタイプをアセスメントする

「夜眠れない」

「昼間も眠くて仕万がない」

上記のような訴えは、様々な症状を表現するので注意が必要である。

 
この際、患者がどのような徵侯や症状について訴えているのかについて、問診や観察により情報収集を行う。ここで収集した情報を元に、アセスメントを行っていく。アセスメントの視点・目的として、以下のポイントを押さえる。

・どのような睡眠の問題があるのか

 ・不眠、 日中の過剰な眠気、睡眠中の呼吸異常、睡眠と関連した異常感覚,不随意運動 睡眠中の異常行動,睡眠·覚醒できる時間帯の異常)
 睡眠障害のタイプによっては、専門的検査や専門機関での治療が必要な場合があ
る。看護師は睡眠状況を直接観察できるので、医師に情報提供を行い、睡眠障害の診
断・治療をサポートする。


③睡眠薬の薬理特性を理解する

 睡眠障害による睡眠時間の短縮は精神症状の増悪にも影響を与えるため、薬物療法をは積極的に用いる。
なお、睡眠障害や中途覚醒の際、医師の指示のもと睡眠薬の与薬は看護師に任されている。

 

④介護介入の導入

 睡眠衛生教育を行っても、理解に乏しい、あるいは不眠の対処法が実践できない患者の場合は、看護師が患者の意識を睡眠に向けられるよう環境を調整し、更衣や歯磨きなど睡眠前の習慣を促し、就床するべき時間であることをはっきり告げるなどの介入を行う。

 

2)回復期の看護について

 患者自らが1日の生活のなかで活動と休息のバランスを考慮したスケジュールを
立てられる、あるいは、 自らの心身の調子を把握して睡眠の要求量を認識し、それに合わせた睡眠がとれるように教育する。

 

3)家族への支援・指導

 家族によっては、たとえ患者にとって必要な睡眠時間であっても「眠りすぎる」と
評価したり、あるいは睡眠薬への不信感から患者が服用するのを止めさせようとする
場合がある。こういった家族に患者への理解を獲得し、理解を得ることが出来るように指導していく。

 まず、家族への支援の第一段階として、精神症状の安定には睡眠を十分とることが大切であることを理解してもらうように指導していく。

 現在処方されている睡眠薬の作用・副作用についても正しい知識が得られるよう説明する。また、不眠は1日の生活の中でとらえなければならない問題である。家庭での生活時間のなかで活動と休息のバランスを考慮し、患者 家族も互いに歩みよれる日課を共に考えていく。

 

2.アセスメントとケアプラン

 

1)アセスメントの視点

(1)睡眠状態のアセスメント
 以下のような情報収集を行うことにより、患者の実際(現状)の睡眠状態を把握する。
加えて、患者本人の睡眠や不眠に対する主観的体験を理解し、偏った睡眠への考え方、間違った知識などがないか併せてアセスメントする。

観察項目

主観的な熟睡感(患者が現在の睡眠状態をどう感じ、どう判断しているか)

・就寝時刻

・入眠までの所要時間

・覚醒時刻

・中途覚醒や早朝覚醒の有無とその際の状況

・熟睡感

・覚醒時の気分

・夢を見るか

・睡眠や不眠に対する思いや苦痛の程度

 

〇客観的な睡眠状態(看護師が観察した睡眠状態)

・就床時刻

・入眠までの所要時間

・覚醒時刻中途覚醒や早朝覚醒の有無とその際の状況

・睡眠中のいびき

・体動

・ねぼけ

・睡眠薬の種類と投与時間·効果出現時間、効果持続時間,副作用

 


不眠が及ぼしている生活への影響のアセスメント

 

 不眠が実際に身体面、精神面、社会面にどのような影響を及ぼしているかを情報収集する。また、看護介入の必要性やどのように介入するかについてアセスメントする。

 

観察項目・視点

(1)身体的影響:

・疲労感

・あくび

・体調の崩しやすさ

・手足の冷感

・首や肩のこり

・眼瞼浮腫

・結膜充血


(2)精神的影響

・集中力の低下

・反応の鈍さ

・神経過敏

・精神的不穏状態
・社会的影響:活動量の低下
・作業能率の低下

 

(3)不眠の原因のアセスメント

不眠、睡眠所外の原因についてアセスメントし、これに対応していく。
不眠の要因である「5つのP」をもとに不眠の背景を探り、これに対応していく。

”5つのP”とは?

Physical(身体的原因)
 体の身体的な要因。具体的には、腰痛、咳嗽、皮膚の掻痒感、(高齢者の場合)頻尿等。

Philological(生理的原因)
 寝室の環境の問題による不眠のこと。入院時やライフスタイルの変化が原因で生じるの生活リズムの変化。

Psychological(心理学的原因)
不安、悩み、緊張などの精神的要因によって生じる入眠困難など。
Psychiatrica(精神医学的)

うつ病、統合失調症急性期、不安障害など、がこういった精神状態の変調に伴う要因。

Pharmacological(薬理学的)
 服用中の薬剤が原因となっている不眠。あるいはアルコールやタバコといった薬物もまた睡眠にとって悪影響となりうるため、薬理学的要因に入る。