精神科ナースの本気メモ

読むだけでスキルアップできるステキなメモ帳

不安のある患者への観察のポイントとアセスメント、適切な看護計画の立案の為に必要なこと

 

はじめに

 患者から不安の表出をされることは精神科に限ったことではない。手術前や終末期、慢性期にも多く観察される。不安とは、人間がより確実に生存するための自己防衛機能であるが、強すぎる不安感は精神症状を引き起こすだけでなく、身体症状を引き起こすこととなる。

 また、”患者の不安感へのケアは、より患者の回復力を高めるだけでく、患者の治療・看護への満足感を高め、医療者との良好な関係を築くことが出来る”ということも念頭に置いておきたい。

 

 

 

不安とは何か

 不安(anxiety)は未知のものや、新しい経験に先立って起こる漠然とした恐れの感情である。不安は身体症状を伴うことがある。具体的には、動機や冷感、振戦、胸部圧迫感などの自律神経系の身体症状である。不安は、感情面や認知面など様々な現れ方を示すため不安と自覚されない。あるいは、「上手く表現できない」「どう表現したらいいか分からないけど、嫌な感じがする。」などと表現されることもある。

 

不安は不要な感情か?

 不安とは、差し迫った危険を知らせ、人がその危険に対処する為の方策を立てることが出来るように覚醒させるサインである。したがって、不安とは自己防衛機能として必要な能力である。

 

不安と恐怖の違い
 不安の対象は必ずしも特定しておらず、漠然とした恐れの感情であり、内的で不明瞭で、葛藤を含む脅威に対する反応であるとされている。また、明らかに外的な対象が特定出来る場合を恐怖と区別することがある。しかし、臨床的には区別されずに使われていいることが多い。

 

どこから病的な不安と言えるか?

 不安は人が日常生活を安全に暮らしていくために必要な感情である。しかし、これが量的に過剰となり、不合理で現実性を書いてたものは病的な不安と呼ばれ、正常な不安と区別する。さらに、日常生活に支障をきたす場合は治療の対象となる。病的な不安は、精神医学的に神経症という概念に含まれてきた。神経症とは、心理学的要因によって精神的、身体的症状が引き起こされたものと定義されてきたが、近年、心理的要因だけでなく、生物学的要因の関与が大きいことが実証されつつあり、1980年『DSM-Ⅲ』以降、現在に至るまで神経症という診断名は廃止されている。

 

 

 

不安のレベルを観察する基準

 不安は、程度が強くなるほど認知が歪んだり、集中力が低下し、不適応行動を招く。効果的・適切な看護介入をするために、不安に対する正しい知識を定着させる必要がある。不安という感情の知識が深まることで、不安のレベルのアセスメントが可能となり、適切な看護につなげることが出来るのである。

 

軽度の不安

 軽度の不安は、日常の生活の中で起こる緊張によって生じる。このレベルの不安は、注意深くなり、見ること、聞く事、理解することなどの能力が普段よりも鋭敏となる。また、人はその時の反応を自覚し言語化する事が可能であり、この程度の不安は学習の動機を与え、個人の成長を促す。

 

 

中等度の不安

 不安対象に意識が集中力が過剰に高まる。しかし、不安対象への過剰な意識の集中の為に、不安対象以外の事には無関心となっている。理解力などが低下するが、注意を喚起されることによって、意識を向けることが出来る。学習能力や問題解決能力が極端に低下し、普段であれば対処できることも対処することが困難になる。

 

 

強度の不安

 意識が不安対象の細部へと集中しがちで、その他のことは何も考えられない。理解力は著しく低下し、他のことに目を向ける為には強い指示をする必要がある。

 患者は安心を得る為に行動をとろうとするが、非効果的・非効率的である。

 

パニック

 パニックレベルまで不安感が強まると、畏怖、心配、恐怖の感情を伴い、セルフコントロール感覚を失う。活動性が亢進して興奮状態になったり、反対に全く動くことも話すことも出来なくなる。知覚が混乱し、命令されても行動をすることが出来ない。長時間のパニックは死を招くことがある。

 

 

 

ケアのポイントと実践

看護の方針

1)ケアを行う上のでの留意点
 不安は行動面や整理面に現れる。患者から不安感情の表出があった時、まずは患者の身体症状を注意深く観察する。そうして、他の身体疾患との鑑別を行う。また、治療に用いられる薬剤のなかには不安症状を誘発する物質が含まれている場合もある。その為、服用している薬剤も確認する。


 次に不安のレベルを評価する。不安のレベルは上記の示してある。不安のレベルが高い場合、不適切な対処行動をとり自分を傷つける可能性があるので、患者の安全確保を優先する。

 また、患者は周囲への配慮が困難になっているため、看護師が安易に接近することで事故につながる可能性もある。看護師側の安全にも十分注意して介入していく。中等度レベル以下の不安に落ち着いたら、徐々に対処行動の改善を目指す。

 

2)該当患者以外への配慮
 不安は周囲の人へ伝播しやすい感情である。したがって、不安のコントロールが不十分な場合には、他の患者との接触を制限する。看護師自身も患者の不安に巻き込まれる可能性があるので、チームカンファレンスなどを実施し、患者の情報を共有し、客観的な評価をもとに感情的に巻き込まれないようにする。

 

不安が生じる背景の理解

別記事参照

 

www.komattahito.com

 

 

 

2)ケアの実際・看護計画

(1)治療初期(開始期)

 突然、強度の不安やパニックが出現することがある。この際、内科系疾患の場合、以下の疾患が疑われる。

・中毒

・心疾患

・内分泌疾患

異常の身体疾患の鑑別の為にのフィジカルアセスメントが必要である。
 高度な不安により、注意力や認知機能が低下し、環境への適応力が著しく低下しているため、急な環境変化により症状を増悪させる可能性もある。また、患者が不適切な対処行動をとっている場合は、看護師が危険にさらされることもある。まずは、患者・看護師双方の安全を確保し、患者にとって安心できる環境整備をし、不安のレベルを下げることを優先する。

 

(2)治療中期

 不安のレベルが中等度程度までに軽減されると、言語的なコミュニケーションが可能になる。”コミュニケーションが取れるようになったなぁ。”と感じることが出来ることが評価の視点になる。不安に関連する症状は持続しているが、注意を喚起されると意識を向けることが出来る。患者に不安の言語化を促し体験を共有しながら支持的に関わる。
 不安を感じた前後の状況や心理的な変化を言語化することで、不安に対する効果的な対処行動を獲得する方法を患者と共に検討する。
 患者が不安をコントロールできるように、患者に合ったリラクゼーションや心理教育など教育的ケアプランを立てる。ここで患者への援助に個別性が出るので、個々の患者の個別性を理解した援助をしていく。

 
 

(3)退院準備期

 この時期になると、患者はセルフコントロールを身に付け、入院環境においては不安に対する適切な対処行動をとることができるようになる。徐々に、退院後の生活に調和できるよう外出や外泊を試験的に行いながら、生活環境の中で対処方法について学ぶ。入院中の保護的環境と比較すると、非常にストレスのかかる状況となる為、症状が再燃する可能性もあるが、あきらめずに繰り返し挑戦出来るように支えていく。
 同時に、退院後の援助者となる家族や友人へ疾患の教育を行ったり、社会資源の導入を検討するなど、環境調整を計画的に行っていく。

 

 

 

 

3)家族への支援・教育と理解

 不安が軽度~中等度の場合、本人の自覚よりも周囲の評価が低い場合が多い。その為、患者は周囲の理解が得られずに孤立してしまう場合多い。患者が家族や社会から孤立することが無いように、家族への教育的介入が重要である。
 患者が新しい対処行動を獲得することで、家族員の役割や家族システムが変化する為、患者と共に家族が変化していけるように支援する。

 

アセスメントの視点
以下の順にアセスメントする。
①不安が正常範囲のものか異常なものであるか判断する。
②不安の症状が日常生活へ影響しているかとその程度を観察する。
③他の精神疾患との鑑別、中毒・心疾患・内分泌疾患など身体疾患との鑑別。
④薬物の影響による症状の発現の可能性の判断