精神科ナースの本気メモ

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アルコール依存症の理解と実践的看護計画まとめ

 


治療のⅠ期とⅡ期

ARP(アルコールリハビリテーションプログラム)
 Ⅰ期治療:離脱期治療 合併症治療・精査を目的とする治療時期
 Ⅱ期治療:精神・身体リハビリテーションを目的とした治療時期
 Ⅰ期治療を終了した患者に対して、酒害教育や断酒への動機づけを強化していく。
・治療初期は、離脱症状に対する薬物療法が主体となり、精神療法的働きかけは困難であった。入院初期に身体的ケアが中心となることで、安心感を得ることが出来る患者も多い。
・治療対象の拡大により合併症も多く観察されるようになった為、離脱期の治療に内科医も参加するようになった。
・患者本人のやる気がないとARPは困難である。その為任意入院が原則。
・再入院(自ら再入院を希望する)は全体の20%程度である。

 

 

 

ICD-10のガイドライン

1.飲酒したいという強烈な欲求、脅迫感。(渇望)
2.節酒不能(コントロール障害)(ex.連続飲酒)
3.離脱症状(手の震え、発汗、不眠、幻覚など)
4.耐性の増大(酒に強くなる、大量に飲まないと酔えないなど)
5.飲酒や泥酔からの回復に1日の大部分の時間を消費してしまう。飲酒以外の娯楽を無視する。
6.精神的・身体的問題が悪化していることを知っているにも関わらず飲酒を続ける。
上記6項目のうち、同時に3症状が過去12カ月のどこかであった。または繰り返し生じた。

 

 

看護師の役割とは?

・正しい知識の習得
・患者の社会的背景を含めた個人の尊重
・患者の家族もクライアントの一人として認識する
 (酒をあげないと暴れてしまう為、酒を与えてしまうなどの共依存関係)
 (受診まで非常に苦労している。)
・断酒は患者、患者家族が生き延びる為のスキル。断酒のスキル獲得への援助。

 

 

 

アルコール依存の症状

〇中心的症状
・飲酒のコントロール障害(こころの依存)
・アルコール離脱症状(神経・からだの依存)
〇随伴症状
・心理的特徴(ex.否認)
・健康問題(肝障害etc)
・社会的問題(家庭崩壊etc)

 

※連続飲酒とは
・体からアルコールが切れないように飲酒する状態。
 例えば、ワンカップなどの日本酒を2~3本ずつ、一日に複数回飲んだり、焼酎を一日中チビチビと飲むような状態
・期間は数日~数カ月と広範囲
・飲酒当初は飲みたい、酔いたいという理由で飲酒するが、後になると離脱症状が出てこないように仕方なく飲酒することも多い。


離脱症状を理解する

 離脱症状とは脳(中枢神経)がアルコールに依存している状態である。この状態は身体依存と呼ばれ、まさに依存の中心とされている。
酒がきれた頃から以下の症状が出現する。
 ・手の震え
 ・発汗(寝汗)
 ・不眠
 ・イライラ
 ・吐き気
 ・嘔吐
 ・幻覚
 ・てんかん発作
 離脱症状が観察される場合には、アルコール依存症の可能性が極めて高い。

 

アルコール依存症の再発

 アルコール依存症には『再発』とういう特徴がある。これは、長期間断酒していても再び飲酒を開始すれば、程なくコントロール困難な飲酒を開始してしまうという特徴である。
 この現象はアルコールだけでなく、薬物など他の依存症の最も重要な特性と一つである。アルコール依存症者が生涯断酒を続けなければならない最大の理由である。

 

アルコール依存の治療

〇心理社会的治療
〇薬物療法

 

心理社会的治療
 1.集団精神療法
 2.認知行動療法
  ・CBT、CST
 3.動機づけ療法(MET)
 4.内観療法
 5.森田療法
 6.顔z九療法
 7.断酒会(AA)
 8.従業員援助プログラム
 9.ネットワーク

 

断酒の三本柱

 ・定期的な通院
 ・抗酒薬の服用
 ・自助グループへの参加

 

薬物療法

離脱症状治療における薬物選択
 ベンゾジアゼピン系薬物(BZ)が最も適している。治療には、すべてのBZが有効であるが、薬物選択時には以下の点に考慮する。
 1.離脱けいれん発作の予防には長時間作用性BZが優れている。
 2.長時間作用性BZの方が安定した治療効果を得ることが出来る。また、リバウンドが少ない傾向がある。
 3.過鎮静という面からは短時間作用性BZの方がより安全である。
 4.即効性のBZ(ex.ジアゼパムやロラゼパム)の方が、遅効性のBZに比べると依存性が高い。

 

抗酒薬に関する知見のまとめ

 ・アルコール依存症治療に関する抗酒薬の有用性に関しては必ずしも明確なものとされていない。
 ・米国の研究などで、抗酒薬はアルコール依存症の飲酒日数や飲酒量を減らす効果があると示されている。しかし、減酒効果はこの薬物使用の目的ではないので、あまり注目されていない。
 ・家族の前で服用するなど、定期的かつ確実に服用された場合、または、本人の意思で服用した場合には、断酒を続ける効果があることは明確である。

 

 

 


抗酒薬の服用用量


○ジスルフィラム
・一日一回 朝(通常)
・0.1~0.3g(通常は0.2g)

○シアナマイド
・一日一回 朝(通常)
・30~150mg(シアナマイド液で3ml~15ml)※通常7ml