精神科ナースをしていると、ほとんどと言っていいほど毎日のように、患者さんから退院を請求されます。
実質、看護師に退院の許可を決める権限など無いので、患者さんからしてみれば結構無駄な労力ですが...。
それでも、患者さんからしてみれば、住み慣れた家や施設に帰りたいという気持ちが溢れてしまうのも理解できます。
精神科の病棟に、ある程度長く勤めると『定番の患者』という方がかなりの頻度でいらっしゃいます。患者さんたちは時を経ても基本的な症状は大きく変化しないので、退院後、服薬を止めてしまったり、生活リズムが不規則なになってしまえば、精神症状が悪化してしまうのはあっという間なのです。
私は、退院が決定した患者さんに決まってする質問があります。
それは、『退院楽しみですね!』と尋ねるのです。
返ってくる答えは微妙な差はありますが、二択です。
『(一刻も)早く退院したい』
又は
『(楽しみだけど)退院は不安です。』
大きく分ければこの二つに絞られてしまいます。
しかし、この返答の仕方には非常に大きな差があります。それは....
”客観的に自分自身を見ることが出来ているか”という差です。
入院生活というのは大きなストレスが患者さんにかかります。閉鎖病棟という鍵をかけられ、自由を制限される場所では生活そのものがストレスになります。
しかし、考え方によっては、毎日決まった時間に食事が出て、内服管理をしてもらえ、夜更かししようものなら、看護師に入眠を促してもらえるという....。
アスリート顔負けのフィジカルとメンタル管理をしてもらえる場所なのです。
そんな環境にいるにも関わらず、『早く退院させろ!!』と医師や看護師、さらには家族へ怒号をあげているうちは、仮に退院しても退院先で上手く歩調をとれないケースが多いのです。
実際、私の質問に対して、『早く退院したくてしょうがない』といった返答をして、退院していった患者さんは、数カ月以内に再入院になるケースがほとんどです。
私個人の願いとしては、せっかく優れた環境で療養する機会を得たのならば、再入院という誰も望まない結果にならに様、きちんとした生活リズムと服薬コントロールを身に着け、精神症状を出来る限り穏やかな状態にして退院して頂きたいものです。