これを読んで下さっているあなたは、【不安】という感情を抱いたことはあるだろうか?多くの人は『ある。』と答えるはずである。
通常、【不安】という感情は正常な人間が危機的状況を回避するために生まれたものであり、人間がより高確率で生存するために進化してきた証である。
しかし、強すぎる【不安】は当人からしてみれば不快なものでしかなく、最悪の場合、死に繋がることもある。今回は、そんな不安が出現する背景について、のらりくらり綴りたいと思う。これを読むことで
不安の出現する背景
不安が出現する背景として、大きく二つに分けることが出来る。それは心理的背景とより科学的見地から観る生理学的背景である。
心理学的理論
ジークムント・フロイトを知っているだろうか?
オーストリアの超有名な精神医学者である。『名前は知っているけど、どんな人か知らない。』という人もいるだろうから、写真を載せておく。
フロイトは、【不安】とは無意識下で生じる「~したい」という欲求(イド)と「~してはいけない。」と内側から禁止する超自我の葛藤から生じると説明した。
雑だが、例を挙げるとこんな感じになる。
『お酒飲みたい~!』『パチンコしたい~!』【欲求(イド)】
↑
葛藤→不安....( ;´Д`)
↓
『だけど、浪費してはいけない!』【超自我】
状況に合わせて調整し,現実に適応させようとする働きが自我であり、不安を回避する為の調整機能の一つが防衛機制である。
防衛機制とは、高校倫理でおなじみの言葉であり、不安を緩和しようと無意識ではたらき、健康な状態(軽度~中等度の不安)であれば上手く対処することが出来る。
しかし、防衛機制が不適切であったり、極端な形で用いられると、病的な防衛となり、対人関係や行動に支障をきたす問題行動として、周囲の人間を混乱させ、病的な状態に陥ることになってしまう。
つまり、不安とは人間にとって、あって当然の感情であり、強すぎる不安が存在する時に限り病的ととらえることが出来るのである。よって、不安そのものは悪いものでもなんでもないということを念頭に置いておく必要がある。
あらかじめ示しておくと、生理学的理論に関しては科学的過ぎて面白味がないので、不安を科学的に解釈し、治療の根拠まで知りたいという人だけ読むといい。
生理学的理論
パニック障害などの研究が進歩し、不安とは精神的な原因だけで生じるのではなく、神経科学的な原因で生じるということが示唆されるようになっている。
脳は知覚や感情によって使う部位が異なることは大抵の人が知る常識になりつつある。脳内で不安に関与する部位は、扁桃体、海馬、前頭前野の3つであるとされている。3つの部位の働きを順番に書くとこのようになる。
・扁桃体・・・不安の発生する部位
・海馬・・・・不安が形成されるまでの条件付け
・前頭全野・・不安出現の制御
不安に関連する神経伝達物質としては、ノルアドレナリン、ドパミン、セロトニンン、γーアミノ酸(GABA)などがある。まだ研究段階のものであり、このほかにも不安に関する神経伝達物質があることは間違いないだろう。
脳内神経伝達物質が作用し、自律神経系である交感神経と副交感神経とが拮抗的・相互補完的(要はヤジロベーみたいに、交感神経と副交感神経とがバランスをとっているというイメージでOK)に機能していると考えられている。
不安を促進させる神経伝達物質
・ノルアドレナリン
・ドパミン
不安や恐怖を押さえる神経伝達物質
・セロトニン
病的な不安を訴える患者の場合、不安や恐怖を押さえる神経伝達物物質の働きが悪いことは何となくイメージが出来ると思う。よって、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)やセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)などが薬物療法として用いられる。
GABA作動性のニューロンは介在ニューロンとして各種神経伝達物質を抑制する働きがあり、不安に抑制的に働くことが確認され、GABAの活性を促進するベンゾジアゼピン系薬剤が抗不安薬として使用されている。