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精神遅滞(知的障害)について総論と看護についてまとめてみました

 

精神遅滞(知的障害)について総論と看護

 

発達障害とは

 発達障害とは、広汎性発達障害(自閉症アスペルガー障害等)、学習障害注意欠陥多動性障害等の総称で、脳機能の発達に関連する障害が通常、低年齢において発現するものをいう。(『発達障害者支援法』より)

 

精神遅滞とは

 精神遅滞とは、知能の発達の遅れ、最終的に到達する知的能力も低い水準にとどまることを意味している。ここでいう知的能力とは、言語機能、思考の能力、及び対人関係の能力をはじめとする、社会的能力(社会性)などが統合されたものである。

 精神遅滞では、これらの能力の発達が遅れることになるが、さらに情緒の発達や、身体及び運動機能の発達の遅れを含んでいることが多い。

 

 

精神遅滞と知的障害の違い

精神遅滞:医学用語

知的障害:福祉領域で使われる言葉

 

 

誘因・原因

・出生前要因・周産要因・出生後要因があるが、18歳までにその要因があることとされている。

・生理的要因、病理的要因・心理社会的要因の3つの領域に分類される。

① 生理的要因

遺伝的要素が認められる事もあるが、その他の病理的成因が見出されないものであり、精神遅滞の大半を占める。

② 病理的要因

遺伝子病、染色体異常、先天脳奇形、内分泌傷害、胎生期から出生期までの感染症、中毒、脳外傷、出生時の低酸素脳症などがあげられる。

③ 心理社会的要因

乳幼児期の養育環境の極端な貧困が、成因として強く疑われるものを示している。

 

症状・臨床所見

・外表奇形などの併存疾患があったり、症状が重度であればと幼少期から気づかれるが、症状が軽度であれば気づかれないこともある。

有病率は約1%とされているが、不適応状態となるまで診断されない例も少なくない。女性に比べて男性に1.5倍多く見られる。受診の契機としては、幼少期では乳幼児健診での言葉の遅れや理解力の低さから進められる、学童期以降では、学業不振や他生徒とのトラブルにより疑われる。

知的障害者の3分の2では、精神障害を併発しておりこれは知的障害のない人たちの数倍高い発生率である。

・知的障害がより重度な子ども(4~18歳)では、40%に複数の精神障害が併発する。知的障害に生じる精神障害はさまざまで、知的障害者の2~3%は統合失調症の基準を満たす。

精神遅滞の子どもの重症度をその知能指数の水準に分類すると次のようになる。

 

精神遅滞

IQレベル

精神年齢

およその割合

軽度

(IQ50~70)

精神年齢9~12歳未満

85%

中等度

(IQ35~49)

精神年齢6~9歳未満

10%

重度

(IQ20~34)

精神年齢3~6歳未満

4%

最重度

(IQ20未満)

精神年齢3歳未満

1%

 

 

重度及び最重度精神遅滞の患者は、他者との言語的交流が極めて限られており、情緒的にも早期幼児期の段階にとどまっているため、身辺の自律機能も不完全であり、多くの介助が必要である。

 軽度精神遅滞の患者は、言語発達も情緒発達も小学校年代の水準に到達することができ、幼児期からのトレーニングと適切な社会的援助により、いずれは社会的な自立も可能となる。

 両者の中間の状態像および精神発達の到達段階を示すのが中等度精神遅滞である。

 さらに、精神遅滞の子どもは、ある面では非常に敏感で脆弱な心身を持っており、ストレスにさらされると、様々な反応を示す事になる。衝動的な問題行動(家出、放浪、性的逸脱行など)の出現、場面緘黙をはじめとした引きこもり、攻撃性の高まりとして自傷行為や他者への乱暴などがよくみられる反応である。深刻な場合にはうつ状態躁状態、あるいはそれらの混合状態を示したり、統合失調症様の妄想幻覚状態に陥る事さえる。このような状態を示すのは重症精神遅滞の患者よりも軽度精神遅滞から境界知能(IQ71~84)にかけての子どもであり、年齢的には思春期から青年期にかけての時期に最も生じやすい。

 

検査・診断・分類

・知能検査(ウェクスラーやビネー式など)と適応機能の評価(ヴァインランド適応行動尺度など)を行い、以下の3点を満たしているかどうかを確認する

① 知的能力が低いこと

② 社会生活への適応能力が低いこと

③ 発達期(18歳未満)における発症であること

・ IQ値と適応機能を総合的に評価して軽度、中等度、重度、最重度に分類する。

精神遅滞患者の重要度の分類は、よくおこる看護問題や看護の展開を左右する。

 

治療

精神遅滞児の治療は、療育指導とトレーニングを含む治療教育が中心であるが、過度の他動性・衝動性が問題になる場合や別の精神症状が現れてきたり、てんかん発作が合併してくる場合には、向精神薬などによる薬物療法が必要になる。

 

 

精神遅滞患者への薬物療法

 現代は理解も行動もスピードが要求される世の中であり、発達障害を持つ人にとって、現代社会の中での生活には多くの困難と苦痛が伴う。整った環境の中でゆっくりやれば出来る事でも、周りの環境がそれを許さないという事態は多くあります。そのような状況下で発達障害を持つ方が混乱するのは当然である。そうした混乱を治めるために対症療法としての薬物療法を用いる。

ただし、発達障害の人が混乱をきたす原因を探ってみると、周りの人の発達障害をに対する理解が不足していたり、配慮のかけた対応が存在する事があります。薬物療法を行う前にそうした問題を取り除く事が第一であることを覚えておく必要がある。

 

看護の展開

 

1)    重度精神遅滞患者に対する看護

 この状態の患者は日常生活の自立性は全くないため、食事、排泄、身体の清潔、更衣などのセルフケア全般について介助が必要である。

 介助の過程では、患者の言葉は全くないが、看護師の言葉がすべてわからないわけではない。言葉以外のコミュニケーションは保たれていて、その経路を通じて自分の意思を伝えている場合もある。したがって看護の過程では、患者に普通の言葉をかけ、視線や身体の反応、微かな表情の変化などから、そのニーズをくみ取り、満たす様にすることが大切である。

 患者によっては、コミュニケーションの方法が、声や肢体の反応で決まっていることもあるため、個々の患者についてその特徴を把握しておくことが重要である。

 この状態の患者(特に患児)は一般に感染症をおこしやすい虚弱体質をもっている。したがって、体温、脈拍などのバイタルサインを観察し、感染症などの早期発見・予防に努める事が重要である。

   

 

2)    中等度精神遅滞患者に対する看護

 この状態の患者(特に患児)は、日常生活面での理解が遅いので、援助過程では、焦らず、理解を助け、行動の助長を図ることが大切である。特に新しい場面に溶け込まなければならないようなときには、簡単な手順でもなかなか飲みこめなくなる。したがって何度でも説明し、不安や混乱が起こらないように助ける事が大切である。

 しかし、根気よく指導すると、経験的に身体で覚え、相当程度に順応出来る事もあるので、言葉ばかりでなく、実際に手に取って身体で指導する事が大切である。

 また、この状態の患者は従順なため、他の患者から利用されるようなことも起こる。患者を取り巻く周囲の状況をよく見極め、そうしたことが起こらないように、保護的な援助を図る事が重要である。

 

3)    軽度精神遅滞患者に対する看護

 この状態の患者は精神機能の伸張は望めないから、むしろ患者の能力に合わせた適応が出来る様に援助をするしかない。

 しかし患者によっては、絵画、手芸、工作、音楽などの領域で優れた才能を持っている場合もあるので、よくその能力を見極め、伸張するように努めることが大切である。